カルスト台地平尾台の自然保護活動
北九州の自然保護活動・今昔(いまむかし)
カルスト台地平尾台の保護活動(1988年~2008年)
「平尾台の自然を考える会」20年間の事績
自然を荒らす行為を無くし、自然観察を楽しめる平尾台とすることを目標とした活動
カルスト台地平尾台(福岡県北九州市小倉南区・苅田町・行橋市)
広さ・・およそ1400ヘクタール 東西6.3km 南北2.7km
標高・・370m~680m
保護区指定・・天然記念物地域320ヘクタール(特別保護地区)
北九州国定公園 筑豊県立自然公園
昭和20年~千仏鍾乳洞が国の天然記念物に指定
昭和25年~日本観光地百選「高原の部」3位入選
昭和27年~平尾台の一部が天然記念物に指定
昭和37年~青龍窟(鍾乳洞)が国の天然記念物に指定
昭和47年~北九州国定公園指定
【平尾台の自然】
平尾台を形作っている石灰岩は・・・
約2億5千万年前のサンゴ礁が隆起したと考えられている! その後、約9千万年前・・平尾台の周辺にマグマが貫入し、石灰岩は熱変成を受け、白い結晶質石灰岩となった!
<草原の野草>
ハバヤマボクチ ウメバチソウ
<草原の野鳥>
ホオジロ ホオアカ
<鍾乳洞>
【平尾台の自然破壊】
<草原を荒らす車両の違法侵入>
痛々しい草原のわだち
<野草の盗掘>
希少な植物の根堀り跡
<ゴミの散乱・不法投棄>
「平尾台はもうダメです!」
「希少な野草は盗掘され、あちこちにゴミが捨てられ、バイクが草原を走りまわっています。平尾台はもうダメです!」植物愛好家の女性は嘆いていました。自然保護が厳しい国定公園でそんなことが・・・
「平尾台の自然を考える会」発会
1988年6月、オフロードバイク乗り入れや野草盗掘で自然破壊が進む平尾台の保護活動をしようと、北九州市内の4団体(日本野鳥の会北九州支部、北九州植物友の会、カマネコ探検隊(洞窟探検グループ)、北九州自然観察指導員連絡協議会(日本自然保護協会))の4団体で、「平尾台の自然を考える会」を発会。
平尾台のパトロールを開始
自然を荒らす違法行為を防止するために、特別保護地区を中心に巡回し、違法行為者に対して注意とお願いを開始した。(1989年~2008年)
平尾台のゴミを放っとけない!~平尾台クリーンキャンペーンの実施
違法行為防止のパトロールでゴミの投棄が多いことがわかり、市内各団体や市民に呼びかけ7年間に渡り実施。
続いて実施したのは・・・
違法行為防止キャンペーンの実施
不定期なパトロールだけでは、違法行為防止が不十分なため、秋の行楽シーズンに1ヵ月間毎週日曜日に、違法行為が行なわれている場所数ヵ所で、違法行為撲滅に向けた注意とお願いを実施。1989年と1990年の秋に実施。
☆キャンペーン中のエピソード
『平尾台なんか守らんでいい!熱帯雨林やサンゴ礁を守れ!』
かみつく青年にひたすらお願いするご夫婦の姿に・・感謝
マスコミへのアピール(報道依頼)
1990年代は国内各地で自然保護問題が起き、自然保護団体が多く結成され、その活動も活発になってきました。長良川河口堰問題、石垣島白保のサンゴ礁保護問題、群馬県尾瀬ヶ原保護問題などです。バブル経済による自然破壊に危機感を覚えた国民の中から自然発生的に起こった自然保護ブームと言えそうです。
そのような時期に、平尾台の自然保護活動に地元新聞社が動き始め、収束の頃まで積極的に取材・報道を展開し、私たちの活動が市民のみなさんに広めることができたと思っています。熱心に取材していただいた記者さんに感謝です。シンポジウムも開催していただきました。
平尾台自然教室(自然観察会)の開催(1990年~2008年)
自然を荒らす違法行為を無くすため、行政への要望や自主的なパトロールだけではその場限りの効果に終わる可能性があることから、広く市民のみなさんに平尾台の自然を紹介し、案内することも必要であり、違法行為を無くすことにつながると考えた。そこで、当会の構成団体が得意とする分野を受け持ち、バードウオッチング、洞窟探検、野草観察ハイキングを3本柱とする「平尾台自然教室」を1990年から2008年まで開催した。
バードウオッチング
洞窟探検
行政の重い腰を動かすには・・・度重なる要望書・意見書の提出 ~巻末参照
『平尾台の自然を考える会はうるさい!』と、福岡県環境保全課がこぼしていたという。マスコミも盛んに報道。県議会議員も動き出す。
平尾台は福岡県が管理する国定公園。平尾台の自然破壊を放置してきた福岡県の責任は重大!地元の北九州市は責任逃れ、福岡県と責任のなすりあい。
さて、行政の対応は?
草原への車両侵入防止柵の整備
貴重な野草の採取防止
当時、国内初とも言われた草原の植生復元工事に着手
ネザサが繁茂し、わだちが目立たなくなってきた
福岡県による違法行為監視パトロール開始
次々と対策が実施され、その効果が表れてきた。特に福岡県が設置した監視員によるパトロールの効果は大きく、自然を荒らす行為が減少してきた。
平尾台テーマパーク騒動(1993年~2003年)
北九州市によるテーマパーク構想が持ち上がる。(ロープウエー、大観覧車、果樹園、ワイナリー、観光牧場など)その目的は、平尾台の自然を守るために観光客を誘導。利益を自然保護に還元する。その後、第3セクター方式を発表。
★平尾台は貴重な自然公園、隣接するテーマパークはふさわしくない。新たな自然破壊のおそれがある。自然保護の名目を利用した利権による利益還元は不純であり、当てにならない。
★この時期次々と破綻する第3セクター。赤字を誰が責任を持つのか紛糾している。バブルが弾け、銀行も出資を渋る。北九州市は計画の大幅な変更を余儀なくされる。
1998年1月 三セク会社に対して、計画の大幅縮小を求める要望書を提出
★1999年9月 テーマパーク構想撤回
平尾台ネイチャーセンター建設を要望
カルスト台地平尾台は、野鳥観察、植物観察、洞窟探検、天体観察に優れた場所であり、観光開発よりも、自然観察・体験の場所として最適である。当会の活動の原点であり、目標の「自然観察のメッカ」として、そのベース基地となるネイチャーセンター(ビジターセンター)の建設が望ましいと考えていました。当時の福岡県知事の奥田八二(おくだ はちじ)氏は、自然にも造詣が深いところから、理解を示してもらえるとの期待を込めて、面会が叶い、要望をしました。
1995年2月、
「平尾台ネイチャーセンター設置推進についての要望書」を当時の奥田県知事に面会し、提出!
奥田知事のコメント:「なぜこういう事に気がつかなかったのかね~」
この直後、「平尾台博物展示施設検討委員会」が設置され、当会の2名が委員として出席。
2000年5月福岡県立平尾台自然観察センター完成
平尾台の自然保護活動を振り返って
◆各団体が個々に行なっていた保護活動が平尾台を舞台にひとつのまとまった活動として実践できた。
◆地質、植物、野鳥の生態系のつながりのある活動ができた。
◆市民と行政に対して、平尾台を通じた自然保護の重要性を意識づけできたと思う。
◆平尾台地区の住民と友好的に付き合うことができた。
◆平尾台自然観察センターの建設で、自然観察を中心とする平尾台としてスタートできた。
◆自然保護と農業行為の折り合いが依然として重い課題として残っている。
【活動期間中の要望書・意見書の提出履歴】
1988年
「平尾台の保護管理に関する要望書」福岡県へ
1989年
「平尾台における文化財の保護管理に関する要望書」北九州市へ
1990年
「平尾台におけるゴルフ場建設計画に関する意見書」福岡県へ
「平尾台の保護と利用についての要望書」福岡県へ
1992年
「平尾台地区保護管理計画への提言」福岡県へ
「平尾台植生復元工事の回復状況報告書」福岡県へ
「秋吉台牧草地改良工事に対する意見書」山口県へ
「パラグライダーワールドカップにおける平尾台での開催反対意見書」福岡県へ
「茶ヶ床~中峠間の道路舗装工事に対する意見書」福岡県へ
「鍾乳洞およびドリーネに対する安全対策についての意見書」福岡県へ
1993年
「平尾台地区における線引き見直しに関する要望書」福岡県へ
1994年
「平尾台遊歩道計画に対する見解書」福岡県へ
「竜ヶ鼻植生調査報告書」福岡県へ
1995年
「平尾台ネイチャーセンター設置推進についての要望書」福岡県へ
1996年
「平尾台クロスカントリー大会についての意見書」北九州市へ
1997年
「平尾台の利用における改善のための要望書」福岡県へ
「カルスト台地平尾台の自然保護に関する要望書」福岡県へ
1998年
「平尾台観光開発計画の規模縮小を求める要望書」ハートランド平尾台へ
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