剪定作業で330本の木を伐採!

北九州の自然保護活動・今昔(いまむかし)

 福岡県内唯一の国立公園 門司区「和布刈(めかり)公園」

    北九州市が剪定作業で330本の木を伐採(2019年~2020年)

散歩する市民は「野鳥の渡りに影響のある時期の剪定はいかがなものか!」

※関門海峡を望む「めかり公園」は、古城山(標高175m)などからなり、福岡県内で唯一の国立公園内に含まれる。瀬戸内海国立公園として1956年指定。約46ヘクタールの特別地域を330haの県鳥獣保護区が囲んでいる。山頂には門司城跡の石碑などもあり、関門橋を一望できる。

 2019年7月、北九州市公園緑地部緑政課から北九州市内の自然保護団体などの情報交換会に、めかり公園における剪定作業に対して市民から意見(苦情)があったので、「野鳥の渡りに影響のない“剪定”の時期などのアドバイスをいただきたい」という話があった。北九州市は関門海峡が望める立地から景観を楽しむためには定期的な樹木の“剪定”が必要で、公園の維持管理として定期的(3~5年毎)に実施してきたという。
※剪定と伐採
 剪定:木の成形や育成のコントロールを目的として、葉や枝を整える。
 伐採:立木をそのまま1本根元から切る。

【“剪定”の状況視察と北九州市への意見送付】2019年10月
 現場の“剪定”を視察したところ、最小限範囲のようであったが、“剪定”というよりは“伐採”であった。そこで以下のような意見を北九州市の担当部署に送付した。

観光の上から、関門海峡などの眺望を維持するため、定期的な樹木の剪定が必要であることは理解できますが、瀬戸内海国立公園の特別地域で、しかも鳥獣保護区であることを踏まえれば、野鳥をはじめとする野生生物と、それらが生息する自然環境への配慮は欠かすことができません。和布刈公園における野鳥の記録は41種を数え(野鳥の会北九州支部調査)、その中には5種(ミサゴ、ハチクマ、サシバ、ノスリ、ハヤブサ)の絶滅・準絶滅危惧種も記録されています。渡り鳥の十字路と呼ばれる北九州市における関門地区は、年中生息する留鳥をはじめ、冬鳥、夏鳥、旅鳥にとっては繁殖・越冬・旅の休息の場として貴重な地域です。都市公園であるとともに、市街地に近い鳥獣保護区としてその保全に配慮し、剪定作業についてもその繁殖等に影響の少ない作業範囲・時期にしなければなりません。また、野鳥たちを支える植生においては、瀬戸内海国立公園における採取規制植物の内、10種の希少な植物が自生していると推測されるため、剪定作業の際には注意が必要です。さらに、剪定した樹木の種類も把握しておくべきでしょう。和布刈公園は北九州市の生物多様性維持の上からも重要な地域であるため、今後の公園維持管理において十分な配慮が必要です。』

<環境省九州地方環境事務所(福岡市)のコメント>
 「国立公園ではあるが、眺望を維持するための伐採等は各都道府県に権限を委譲している(伐採が許可されている範囲は旧国民宿舎周辺のみ)。また、めかり公園は都市公園法(国交省)の対象であり、国立公園とのからみもある。」

【その後も“伐採”続く!】
 2020年2月には環境省九州地方環境事務所福岡の職員が同行し、伐採現場を視察し、後日、伐採された樹種を確認に行った。
<伐採状況>
 関門海峡を望める場所以外も多く伐採しており(山側の木も)、道路沿いの木も伐採している。通行する人の安全対策もあったかもしれない。ただ、伐採が乱暴で、計画性が見られず、かなり大きな木も根元近くから伐採している。本来の目的から外れているようだ。
 
 
<環境省地方環境事務所職員のコメント>
 「ある程度の権限は自治体に委譲しているが、このような規模の伐採は委譲していない。県も市も認識しておらず、北九州市は「間違っていた」と言っていた。」
 「熊本の九州地方環境事務所に報告書を作成するので、伐採された樹種教えてほしい。」
★つぶやき「北九州市への処分はあるのだろうか?(始末書、再発防止、植生回復命令など)」

伐採樹種名
 主な樹木として、ヤブツバキ、タブノキ、ヤブニッケイ、クスノキ、エノキなど、温暖な北九州を代表するような10種のほかに、コナラ、ナナミノキ、ハゼノキなども多く切られていた。

<伐採種確認に同行した新聞記者さんから>
 北九州市の担当部署の課長さんは、どの程度の伐採規模か知らなかったようだ。環境省地方環境事務所は当初「違法行為です!」と言っていたが、その後一転、「公園管理のための施行の範囲」と言い出した。
★つぶやき「国と市が丸く収めようとしているのか?」

<環境省地方環境事務所(福岡)の最終見解>カッコ内はブログ作成者の言い分)
①今回の伐採は特に違法ではない。(違法にしなかったのだろう)
②めかり公園は都市公園でもあるので、維持管理は北九州市に委譲しており、許可申請が必要な規模は特にない。(委譲された自治体のやりたい放題?)
③観光のための利用促進が優先されるので、自然環境への配慮はがまんしてもらう。(自然環境が重要な国立公園と言えるのか)
④環境省(福岡)から事実関係を聴きに行っただけでもよかったのではないか。(国立公園を管理する環境省が事情聴取しなくてもよかった?)
⑤今後このような伐採計画の際には、野鳥の会等に事前に話しておくといいのではないかと、緑政課の係長に話しておいた。(環境省では適切な判断ができない?)

【ブログ作成者から】
 都市公園が国立公園よりも優先するということがあっていいのでしょうか。釈然としません。当初北九州市に苦情を言った市民の方も納得しないでしょう。
 以前、国民宿舎を事務局とする「和布刈野鳥の森を育てる会」という市民団体が長年活動していました(野鳥の会北九州支部も協力していました)。巣箱を架けて、野鳥観察会をしていたその頃の子どもたちが今、伐採された多くの木を見たらどう思うでしょうか。景観維持や歩行者の安全は理解できますが、自然環境に全くと言っていいほど配慮が無かったのは、「環境未来都市」「SDGS未来都市」とは言えません。
 これが都市公園でなければ始末書では済まないでしょうが、都市公園であってもなくても、野鳥たちにとって貴重な自然は同じです。自然公園・都市公園の専門家である北海道大学の先生も言ってました。「市民の理解や協働により管理運営することが求められている」と。山田緑地の問題も和布刈公園の問題も、市民の理解を得るのが面倒だと思っているようです。自治体は市民からの疑問や信頼に応える努力を怠ってはなりません。
 それにしても、自然を守る砦(と私は思っていますが)の環境省ですが、今日もどこかの風力発電に叩き落されている野鳥を助けることもせず、野鳥が棲む森も守れないとは、自然を大切にする国民からは落胆の声が聞こえそうです。環境省さん、奮起してください!














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