「日本の重要湿地曽根干潟」風力発電計画顚末記
曽根干潟にもあった風力発電計画~3年で計画没
北部九州有数の干潟(517ha)北九州市小倉南区曽根干潟
2016年11月
地元有志者が「曽根干潟にウインドファーム化実現に向けての取りくみ」を発表!日本野鳥の会北九州支部は突然のことに驚き、事の事実を確かめることにしました。
風力発電計画の理由
曽根干潟の再生のために、「曽根干潟の自然を取り戻し、底生生物や魚・カキなどの育成を進める」「自然エネルギーを考え、自然に優しく環境完備に役立つ電力開発の実現」を訴えていました。しかし、風車を建てて(さすがに干潟の中に建てるわけはない?)干潟はもちろん、野鳥や底生生物(カブトガニをはじめカニ類など)に悪影響があれば、生態系が崩れ、干潟の再生とは矛盾する結果になるのではないか。
北九州市の港湾関係に勤めていたOBは、
「そもそも曽根干潟全体が臨港地区漁港区の網がかかっており、構築物の規制がある。風力発電をやろうとすれば、都市計画変更をする必要があり、市役所内での調整から手続き、そして国への申請等、すぐには建設できない。」
ベンチャー企業が風況観測用タワーを建てるとの情報あり。
「曽根干潟の野鳥たちに大きな影響を与える風力発電建設は何としても阻止しなければ」
「曽根干潟」の生きものたちを守るために!
日本の重要湿地の一つであり、IBA(国際的に重要な鳥類の生息地)選定地の「曽根干潟」。希少な鳥類が生息し、日本のカブトガニ最大の生息地(産卵地)である「曽根干潟」。その重要性を行政や地元に再認識してもらうには、野鳥の会をはじめとする保護団体や、干潟と生きものの識者・専門家の協力を得ながらの取り組みを「日本野鳥の会北九州支部」と「カブトガニを守る会福岡支部」が協力して進める必要があることを確認!
2017年12月、事業者による説明会
風況観測を請け負う事業者(筑波大学発ベンチャー企業)から、説明会開催の連絡があり、保護側からは野鳥の会北九州支部、カブトガニを守る会など12名が出席し、説明を受けた後、質疑応答がありました。(発注した地元関係者も4名出席)
<説明会で明らかになったこと>
◆「曽根ウインドファーム計画」の当初案2000kw級風車10基程度という計画は、事業者の日本撤退でとん挫した。
◆代わりに「農山漁村再生可能エネルギー法」を利用して風力発電を設置し、その一部の電力を使い、干潟の再生を図る(※)とともに、曽根の漁業の活性化を図ろうという計画。また、発電した電力を活用した直売施設(農産、水産物)のランニングコストを低減。(※)発電電力を使い、マイクロナノバブルと散水曝気で水(干潟)を浄化、生物の活性を図り、水産振興が可能。
◆風車の設置場所や規模はまだ未計画。今は、その適否を調べる風況調査を行う段階。結果によってはゼロもあるが、環境省の調査結果では稼働可能との認識あり。
<当方の出席者から>
●事業者側は曽根干潟の重要性について認識が乏しい。重要な湿地で、鳥類やカブトガニについても、ほぼ知らないまま、地元からの要請に応じているようだ。
●干潟の中に風車を建てるということになると、風車が干潟を分断し、干潟が狭くなることで干潟の自然再生力が低下する。風車の電力を使って干潟の再生はできない。
●風況観測の音波が干潟の鳥類に影響があるかないかなど、全く意識していない。
●曽根干潟周辺に風力発電を建てようということに変わりはなく、今後干潟を避けて、後背地もしくは沖合を建設地にするなど、反応を見ながら具体的な計画が練られていくと思われる。
●風況調査の説明は、本当に専門家なのかと思われた。説明会資料も「付け焼刃」のような資料で、ミスも数ヵ所あり、質問にも答えられないような場面があった。
★曽根干潟の風力発電施設を建てることについて、規制できる法や条例があるのか?
「北九州市臨港地区内における構築物の規制に関する条例があるが、市長が公益上やむを得ないと認めるものは除くという例外規定が付いている。」・・・危ない、危ない!
2018年8月~11月「曽根干潟の生きもの記録写真展」を開催
風力発電計画に対して、地元の人たちがどう受けとめているのか、また計画の詳細もわかっていないため、正面からの反対もその効果が疑問であることから、今できることを実施しようと、写真展の開催を思いつきました。
曽根干潟の価値や貴重さ、重要性、賢明な利活用についてアピールすることで、曽根干潟とそこに棲む生きものたちを次世代に残していくべき宝だと住民が思い、守っていかなければと気が付いてもらうことが大事だということで、企画しました。
写真展に来た親子のみなさんや、若い人からも応援をもらいました!
やや間が空いて・・・2019年6月
「曽根干潟風力発電計画が中断?の情報あり!」
計画中断情報の以前(2019年3月)、風力発電計画の当事者に「風況調査は1年過ぎたが、結果はどうでしたか?」とたずねたら、「筑波のベンチャー会社がデータを未だ送ってこない。何かトラブっているようだ」「今のところ風力発電事業をやるとも、やらないとも決めていない」とのことでした。その後、風力発電計画が動く気配もなく、うやむやのうちに消滅したようです。
北九州市の担当部署は、「当初から実現性に乏しく、地元も必ずしも賛成ではなく、いずれつぶれるだろうから静観しておればよかったのに・・・」と言ったとか。まるで他人事のようです。
曽根干潟の保全や生きもの保護に対しては、特に具体的な取り組みをしてこなかった北九州市だからこそ、風力発電のような開発計画が出てしまうと言えるでしょう。普段から積極的な保全の取り組みをしていれば、開発側もそうは手が出せないはずです。
「災い転じて福と成す」ことができるか?
30年前、「曽根干潟を守る会」が曽根干潟をラムサール条約登録湿地にと声を上げ、短期間ながらも活発な活動を展開しました。願いは成就できなくても、少なくとも市民の間に曽根干潟のことを意識してもらえたことでしょう。
曽根干潟風力発電計画は保護団体の間で危機感が起きましたが、市民には関心を持ってもらえたかというと、地元でささやかれた程度だったかもしれません。そして、法的な保護の網がかかっていないことの弱さも露呈してしまいました。
この“事件”を機会に、曽根干潟とその周辺をせめて鳥獣保護区くらいにはしておくべきだと、北九州市は思わなかったのでしょうか。もちろん、私たち保護団体の取り組みや努力が足らないことも大いに反省しなければと、この当時思いました。
「子孫に残そう曽根干潟」ですが、どんな形で残せるでしょうか。





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